相談:顧客志向と言う割に、ニーズのない商品も提案しないといけません。

キャリアの考え方

営業職や販売職の方のキャリア相談を受けていると、よく出る悩みとして、「お客さんにニーズがない商品まで提案しないといけないのが嫌」というお話があります。

「会社は顧客志向が大事とか言う割に、結局売り上げのことしか考えていないんですよ。」という声も聞きます。

確かに、顧客が必要と言っているもの以外のものを売るのには、心理的な抵抗が働きますよね。営業していた頃、いわゆる「お願い営業」をするのが嫌だったな、と私も思っていました。

一方で、顧客に必要だと言われていないものであっても、ふと提案したものが、実はニーズがあったという経験もしてきました。

銀行員時代、事業の融資を社長に対して提案した際、たまたま住宅ローンの話をしたら、借り換えのニーズがあった。また、提案をしていなかった商品が、競合他社によって提案をされ、契約を持っていかれたという経験もしたことがあります。

今回は、この顧客ニーズと提案の狭間で揺れる気持ちについて、自己決定の視点から考えてみました。

  • 自分には営業が向いていないんじゃないかと思う。
  • この会社では営業ができないと思うので、顧客志向な会社に転職しようと思う。
  • もっと気持ちよく営業がしたい。

あなたがこのような思いを持っているなら、きっと参考になるはずです。

特に、この気持ちをきっかけに転職やキャリアチェンジを考えてしまう人が多くいますが、その前に立ち止まって考えてみてください。安易に選択すると、あなたの営業の適性という原石を見落としてしまうことにもなりかねません。

考えて、腹落ちさせて、納得したうえで、営業を続けるのか、キャリアチェンジするのか、転職するのか、という手段を選択してみてください。

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その提案、飲むかどうかを決めるのは、誰か。

あなたの提案を飲むかどうか、決めるのは顧客です。

この前提に立ってみるといかがでしょうか。

みなさん、顧客志向な仕事をしたい、顧客のためになる提案がしたい、とおっしゃいます。

一方で、提案するのが申し訳ない、ニーズにないものを提案するのは気まずい、という話をよく聞くのですが、お話を聞いていると、提案したものを買うかどうかを顧客ではなく自分が決めてしまうような錯覚に陥っている人が多いと感じます。

提案したら迷惑になってしまう、このお客さんには意味がないと思うものを提案するのが嫌、使ってもらって効果がなかったらどうしようと思う、など。

顧客には自己決定力(自分のことを自分で決める力)があります。それを信じてみてはいかがでしょうか。

端的に言えば、不要だと思ったらちゃんと断ってくれます。

だから、安心して提案をしてみましょう。

ただし、嘘の情報を伝えて自己決定を促したり、自己決定を阻害するような環境を作ったり(例:脅しや高圧的な態度など)というのは違います。健全に自己決定できていませんので、これこそが顧客無視の営業です。これはやめましょう。

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「顧客のニーズ」なるものが、どこまで見えているか。

次に、「顧客のニーズ」が、どこまで見えているかと考えてみましょう。
この時の主語は、営業をするあなた、営業を受ける顧客自身、の両方です。

あなたは、顧客のニーズがどこまで見えているか。
顧客は、顧客自身のニーズがどこまで見えているか。

先日、スタバに行ったとき、こんなことがありました。

ほうじ茶ティーラテを注文したところ、店員さんに「エスプレッソをトッピングしてはどうか」と提案を受けました。

それは、顧客である私には「ニーズ」のない提案でした。

しかし、提案を受けたとき、こんなことが私の頭によぎりました。

  • へえーおいしんだ。
  • ほうじ茶にエスプレッソ、初めて聞いた。
  • 遅い時間だし、カフェインとるのはな。
  • でもおいしそう。飲んだことないので初めての体験になる。
  • おいしくてもおいしくなくても、話題にはできそう。
  • 最近、同じものばかり頼んでマンネリ化しているのもある。
  • 店員さん感じ良い人だし、いい顔したい自分もいる(笑)。
  • 価格は?50円。まあ許容範囲内。

ほんの数秒でしたが、結果として私はそのトッピングを注文しました。

「買いたい」となったのです。

この出来事を振り返ってみて、もう一つのポイントがあったと自分の中で考え至りました。

それは、自分の欲求を取り戻す、というテーマです。

小学生の後半くらいから、何となく周囲よりも「大人」な自分を生きてきたという自覚がある私。自分の欲求を抑えて、「いいよいいよ」「なんでもいいよ」と言っていたら、自分の欲求が何か分からなくなってしまいました。それに気づいたここ最近、私は自分の欲求に耳を傾けること、好きなものを好きということ、「どっちでもいい、なんでもいい」という答えをしないこと、などを心がけていました。

今回の提案によって、私は自分の欲求に気づく機会を得たのです。
直感で「欲しい」と思ったものを、買うという選択ができたことで、自分への満足感が少し高まりました。欲求に従った選択ができたな、と思えたのです。これも、今回の提案をいただいたことで、得られたものでした。

さて、話をもとに戻しましょう。

ここまでの私のニーズに、誰がどこまで気づけていたでしょうか。

店員さんが気づけていなかったのは間違いないでしょう。その店員さんに私の過去の話なんてしたことがありませんからね(笑)。

私自身はどうか。はい、このニーズには気づけていませんでした。
心のどこかでこのような選択の機会を得ることを求めていたのだと、後で考えてみて気が付いたのです。

顧客のニーズというものが、どこまで見えているのか。見えていないのに、その提案が顧客のためになるものかどうかは、判断ができないでしょう。

改めて、自分も顧客も、気が付けていないニーズがあるのではないかと考えてみてはいかがでしょうか。提案をするときの気持ちが変わってきませんか。

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その顧客志向は、顧客志向か。|あなたが本当に守ろうとしているものは。

もう一つ、顧客のためにならない提案をするのが嫌だというお悩みについて、考えてみたいのが「あなたが本当に守ろうとしているものは何か」ということです。

多くの方が、それは顧客志向であることと答えます。「顧客のためになる提案をしたい」と。

その「他者貢献」の思いは素晴らしく、ぜひ持ち続けていただきたいと純粋に感じます。他者に対して何かの役に立とう、貢献をしようという思いが、人を動かします。

一方で、そのうえで提案をしたくない、という問題を考えてみましょう。

提案することで起こる「顧客志向でない状態」とは何でしょうか。
もっというと、ニーズと違うものを提案することで発生する、最も避けたいシナリオは何でしょうか。

おそらく、「自分が嫌われること」ではないかと私は思います。

提案されて断られる、否定される、頼りにならない担当だと思われる、など。

もちろん、顧客との関係の深さや長さ、議案の中身など、さまざまに考慮する要素はあります。

ですが、顧客志向であると言いながら、守ろうとしているのは「自分が」嫌われないようにすること。
「顧客志向の皮をかぶった自分志向」に陥っているわけです。

これは、私自身もよーくあります。今は、相手の自己決定力を信じられるようになったので、だいぶ減りましたが、以前は本当によくありました。

そのまま放置することもできたわけですが、この「顧客志向の皮をかぶった自分志向」の気持ちに向き合わずにいると、どのような仕事をしても、どこかで同じ気持ちに基づく問題にぶつかります。

それに気が付かず、向き合わずに、転職やキャリアチェンジを繰り返していくと、職を変えて同じ問題に悩まされ続けることになるので、熟考せずにそれらの手段を選択することはお勧めしません。

考えて考えて、扱っている商品そのものに価値や共感を全く感じない、それを売ることそのものが無理、という結論に至ったら、場を変えることも考えてよいのでは、と思います。

「営業向いていないかも」「今の会社は合わないかも」と思ったら、「顧客志向の皮をかぶった自分志向」になっていないか、一度考えてみてください。

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まとめ

今回は、顧客にニーズがないものを提案すること、について書いてみました。
キャリア相談でもよくテーマとして挙がる内容です。営業職を長くやっていた私にとっても実感の湧くトピックでした。

他者のために何かをしたいという思い自体は、ピュアに素敵だなと思います。ぜひ持ち続けて体現した欲しいと応援したくなります。その体現の仕方を、もう一段・二段、考えてみていただくと、日常の景色が変わってくるのではないかと思います。

個別のご相談も承っております。私の場合はこうなのだけど、というご相談、大歓迎です。ぜひ、キャリア相談にお申し込みください。

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